
昆虫の擬態はおもしろい発見があり、つい虫探しをしたくなるんですよね。
中には、目立ちたい昆虫と目立ちたくない昆虫がいます。ともに、自分の身を守るために擬態しています。
多くの昆虫は、目立ちたくないはずです。天敵に見つからないために身を隠そうとしていますが、そんな中、あえて目立って自分の身を守ろうとしている昆虫もいます。
なぜ、あえて目立とうとするのでしょう?
ここではどんなカモフラージュの達人、擬態昆虫がいるか、ご紹介します。身近にいる「隠れ昆虫」を探してみよう!
目立ちたくない昆虫(隠蔽的擬態)

目立ちたくない昆虫には、捕獲するか・されないかの 2パターンあります。
- 天敵から身を守る
- 獲物に気づかれないようにする
1.捕獲されたくない昆虫

自分の姿を周りの環境に似せて紛れ込むことで天敵に自分の存在がわからないように擬態しています。
食べられないように隠れる・息をひそめている虫は、身を守るために目立ちたくないですよね。
- 草に擬態するバッタ
- 枝に擬態するナナフシ
- 葉に擬態するコノハムシ
など。
植物の一部になりきるので同種の昆虫でも茶褐色や緑色など環境に応じて色が変わり、目立たないように色や行動でカモフラージュしています。
2.捕獲したい昆虫

攻撃する側の昆虫が獲物に自分の存在がわからないように擬態しています。これは捕獲されたくない昆虫と同じで環境に似せて紛れ込んで待ち伏せしています。
草・花びら・枯れ葉などに擬態するカマキリ
など。
代表的な昆虫は、カマキリですね。
バッタやちょうちょを捕まえようと身をひそめています。そんなカマキリもカラスなどの野鳥やクモ、スズメバチなどの天敵に見つからないように擬態してカモフラージュしています。
昆虫以外にもカエルやクモなども捕獲のためにカモフラージュしているのです。食べられないように身を隠すだけでなく、捕獲するために身を隠すというわけですね。
目立ちたい虫(標識的擬態)

毒針があるハチや体内に毒をもつチョウなど、鳥たちが警戒する昆虫の、色や形をそっくりにまねて身をまもろうとする昆虫たちがいます。
ぐんま昆虫の森の展示「昆虫たちの擬態」より
標識的擬態とは、捕食されやすい生物が警戒色などの姿の生物に似せて自分は危険だ、とアピールをすることです。
毒や不快な味の生物になりきることで狙われにくいため、あえて目立とうとします。

【毒チョウに擬態】
毒チョウとそっくりな無害チョウ
体内に毒をもつチョウに、そっくりな姿で身をまもるチョウがいます。不思議なのは、メスだけが擬態しているケースが多くあります。これは、卵を産む役割があるメスの生存率を高めるためだと考えられています。
ぐんま昆虫の森の展示「昆虫たちの擬態」より
【テントウムシに擬態】
テントウムシにそっくりな昆虫
テントウムシのなかまは、外敵に襲われると苦い汁をからだから出して身をまもり、はでな模様で目立つ種類が多くいます。ハムシのなかまには、テントウムシと良く似た模様の種類がいることで知られテントウムシに擬態していると考えられています。
ぐんま昆虫の森の展示「昆虫たちの擬態」より
【ハチに擬態】
ハチにそっくりな昆虫
ハチ特有の黒と黄色の縞模様は、いかにも危ない印象をうけます。鳥たちはハチのなかまを模様や形で認識し痛い目にあわないよう避けています。すると、ハチのなかまでもないのに、ハチにそっくりな姿をすることで身をまもる昆虫たちが進化の過程で現れました。
ぐんま昆虫の森の展示「昆虫たちの擬態」より
- スズメバチになりすますトラフカミキリ
- ベニボタルになりすますコケガ
- てんとうむしになりすますテントウムシダマシ・キボシマルウンカ
*テントウムシダマシ:「オオニジュウヤホシテントウ」など。
隠れるというより、あえて姿を見せてだまし、身を守る擬態です。
擬態の比較

上の写真、てんとうむしの「さなぎ」がブロックのコンクリートになじんでいるように感じます。
右側にてんとうむしの成虫が目立っています。パッとみたとき、さなぎよりてんとうむしの成虫に目がいきます。目立っているてんとうむし成虫、目立ちたくないさなぎ。
成虫・さなぎ・たまご、それぞれの時期によって目立ちたくない場合は、目立たないところに存在しています。
スズメバチやてんとうむしのように自ら危険だから近づかないで!と警告色などの姿で目立つ昆虫もいます。天敵に「手を出してはいけない相手」だと知らせるのが目的です。
【隠蔽的擬態】 | 【標識的擬態】 |
---|---|
受け身・まもり | 攻め・強気 |
目立ちたくない | 目立ちたい |
植物など環境の一部になりきる | 警告色などの生物にマネる |
警告色などの姿をして自分は危険だ、というアピールをして目立たせる標識的擬態は、隠れる隠蔽的擬態とは対照的ですね。
化学擬態する虫も
化学擬態とは、におい成分を出すことでほかの生物に擬態し、天敵から身を守ることです。フェロモンなどの化学物質をつかってアリの巣を利用する昆虫もいます。
- アリヅカコオロギ
- ヒゲブトオサムシ
- シロアリノミバエ
など。
アリやシロアリは目はほとんど見えないため、感触やにおいで助け合っています。アリなどのにおいをマネることで巣の中で快適に忍び込んで生きています。
カモフラージュの達人たち
\河川敷の流木に擬態している虫はどれ?/
カワラバッタの調査で手取川に行きました。
— 石川県ふれあい昆虫館 (@FurekonOfficial) September 13, 2021
カワラバッタの写真を撮りたかったのでそれらしいバッタにそーっと近づいたところ、人違いならぬバッタ違い。
このバッタはイボバッタでした。
河川敷の流木にそっくりですね!#ふれあい昆虫館 #イボバッタ #擬態 #カモフラージュ #バッタが1頭います pic.twitter.com/Sv40beZ0TD
▶正解:大きな流木の下にいるのが「イボバッタ」と呼ばれるバッタでした。
イボバッタ、見事な擬態。#昆虫 #イボバッタ pic.twitter.com/7HgXK9edW9
— やまもと (@yamamoto_natuer) August 31, 2020
\小枝に擬態している虫はどれ?/
This is an excellent photo for our mimics and impressionists themed week. Who is a twig & who is a buff-tip moth in this photo? Brilliant aren't they? pic.twitter.com/LoRnwvSlco
— Sussex Wildlife Trust 🦔 (@SussexWildlife) July 7, 2021
▶正解:画面右から2番目にいるのが小枝になりきる「バフチップ」と呼ばれるシャチホコガ科の蛾でした。
Here's one I found last year. #bufftip
— Bernoid (@bernoid) July 5, 2021
If it's on a stick you're like… 'what moth?' pic.twitter.com/mbLGclufB3
\日本にも小枝に擬態する昆虫/
身近な隠れ昆虫を探してみよう
▲動画:むしらぶろぐ「【12種】虫の「こんなところにいる・・」を集めてみた【動画・写真】」」より

虫の天敵、鳥は、視覚で空から見つけてきます。目立たないように姿をだましておくことで天敵から見つけにくくさせています。
私たち人間も、そこにいるとわかっていてもなかなか見つけられないことが多く、擬態昆虫はおもしろいですよね。
カマキリやナナフシが風に揺れる草や枝となじむようにからだを微妙に揺らしたりするのもおもしろい昆虫の行動のひとつです。
身近にいる擬態昆虫、なかなか探すのがむずかしいですが隠れている昆虫を子供と一緒に探してみましょう!見つけたときは、きっと盛りあがりますよ。
「カマキリ」を観察
▲動画:むしらぶろぐ「 カマキリ見つけた!なぜそこにいる?ゆらゆら揺れながら歩く 」より
ゆらゆら揺れながら葉っぱなどの植物にマネているのかもしれません。
しかし、周りはコンクリートばかり。逆に目立った印象。カマキリはそれに気づいていないのかもしれません。
ただ、日ごろから植物になりきっているので周りがコンクリートばかりでも体が自然と揺れてしまうのかもしれませんね。
「ナナフシ」を観察
▲動画:むしらぶろぐ「 野生のナナフシを初めて発見!捕まえて昆虫観察!餌をモリモリ食べる姿がかわいい 」より
木の枝に似ているのでよく見ないとナナフシだとわかりにくいです。
「ここにいるよ」と思ってみても、ナナフシだと思えなかったりします。そのため、意識をしていなければナナフシがいても気づいていないのかもしれません。
虫は隠れ名人ですね。